不妊治療で妻が情緒不安定に。生理が来るたび泣き崩れる姿に、夫としてどう接するのが正解?かけるべき言葉がわかりません【公認心理師監修:お悩み相談室】

妊活・不妊
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今回は、不妊治療を進める中で情緒不安定になってしまった妻への接し方に悩む、30代男性からのご相談です。生理のたび激しく泣き崩れる妻に声をかけるも拒絶され、夫としての適切な距離感や精神的サポートに苦慮しているようです。

妻の心に寄り添いながら、夫自身のストレスも減らす見守り方について公認心理師・臨床心理士がお答えします。

夫婦ふたりで1年半がんばりましたが上手く妊活が進まず、3ヶ月前から不妊治療クリニックにお世話になっています。

お互い治療開始のハードルを乗り越え、これで見通しが立つかもと少し期待していたのですが、最近、妻があきらかに以前と比べて暗くなりました。
毎月、生理が来るたびに妻はトイレから出てこられなくなるほど落ち込み、声をかけると泣き崩れてしまいます。SNSで友達の出産報告を見たり、近所で赤ちゃん連れを見かけるだけでも「いいなぁ…」と呟いては情緒不安定になることも増え、気分転換の外出も嫌がるようになりました。 

自分なりに精一杯の言葉を掛けていますが、「もう何も言わないで!」と激昂されることも。
付き合っているときから、「言葉で言ってくれないとわからない」と言われてきたので、どう精神的にサポートすればいいのか分からなくなっています。
明らかにメンタルが不調な妻を見ていると胸が締め付けられますし、このままだと妻も私も不妊治療自体が大きなストレスになってしまいそうです。

夫としてどのような距離感で見守り、どんな言葉をかけてあげるのがベストなのでしょうか

(30代、男性、ハンドルネーム:ペンギン、職種:エンジニア)


最初に

ペンギンさん、1年半ご夫婦で妊活に取り組み、3か月前から不妊治療クリニックにも通い始めたのですね。治療を始めるというのは、期待もありますが、同時に「ここまで来てしまった」という重さもあるものです。
そのハードルをおふたりで越えることが難しいカップルも多い中で、お二人はよく話し合い、協力して進んでこられたのですね。

その一方で、パートナーさんが以前より暗くなり、生理が来るたびにトイレから出られないほど落ち込む。赤ちゃん連れやSNSの出産報告に触れるだけで気持ちが崩れてしまう。
その姿をそばで見ているペンギンさんも、胸が締め付けられる思いなのでしょう
声をかけても「もう何も言わないで!」と言われたら、こちらもフリーズしますよね。
言葉で支えようとしたのに、言葉が地雷探知機みたいになってしまう。これは本当に難しい状況です。

でも、ペンギンさんが間違っているわけではありません
どうにか支えたい、ひとりにしたくないと思っているからこそ、悩んでおられるのだと思います。

どんな関わりが必要かを確認してみる

今のパートナーさんは、単に「妊娠できなくて悲しい」というより、毎月小さな喪失を経験している状態に近いのかもしれません。
生理が来るたびに、期待していた未来が一度消える。SNSで誰かの出産報告を見るたびに、自分だけ別の世界に取り残されたように感じる。
頭では「人は人、うちはうち」と分かっていても、心はそんなに物分かりよくありません

ですから、ペンギンさんにできることは、気の利いた言葉で元気づけることよりも、「言葉をかける前に、今どんな関わりが必要かを確認すること」かもしれません。

たとえば、
「今は話を聞いた方がいい?そっとしておいた方がいい?隣にいるだけがいい?」
と聞いてみる。
これなら、“支える”を押しつけず、選んでもらうことができます

また、泣いている最中に励ましや解決策を出すと、相手には「早く泣き止んで」と聞こえてしまうことがあります。
まずは「つらいよね」「今月も本当に頑張ったよね」と、落ち込みをそのまま受け止めることが大切です。

心理社会的ケアが重要

ただ、それでも「そんなことイチイチ聞かないでよ!」と言われてしまうこともあるのですけれどね…。

妊活や不妊治療というのは、それほどまでに人の心のコントロール感や、自分自身への信頼、努力は報われるという世界への信頼を、失ってしまう体験でもあります。

不妊治療では、身体的な通院や検査だけでなく、終わりの見えない感覚や、アイデンティティの揺らぎといった心理的負担が大きくなりやすいことが知られています(※1)。
また、生殖医療の現場では、患者さんの感情、夫婦関係、日常生活への影響を含めた心理社会的ケアが重要だとされています(※2)。

具体的には、まず「治療の話をする時間」と「治療から離れる時間」を分けてみてください
しょっちゅう話し合おうとすると、家全体が不妊治療クリニックの待合室みたいになってしまいます。
週に一度だけ作戦会議をする、判定日や生理直後は結論を出さない、などのルールがあると少し楽になります。

また、パートナーさんの落ち込みが強く、外出できない、眠れない、食べられない、自分を責める言葉が増える状態が続くなら、クリニックの心理士やカウンセラー、自治体の相談窓口につながることも検討してください。
これは大げさではなく、治療を続けるためのメンテナンスです。
車だって走り続けたら点検します。人間の心をノーメンテで走らせる方が無茶です。

最後に

ペンギンさん自身も、全部を受け止めようとしなくて大丈夫です。
そばにいること、選択肢を聞くこと、悲しみを急いで片づけないこと。
それだけでも、パートナーさんにとっては大きな支えになるはずです。

 

<参考文献・出典>※以下の文献を参考にしています
Scientific reports
▶Depressive symptoms, anxiety, and quality of life of Japanese women at initiation of ART treatment. :https://doi.org/10.1038/s41598-021-87057-6 ※1

Human Reproduction
▶ routine psychosocial care in infertility and medically assisted reproduction ※2

この記事の回答者

戸田さやか

公認心理師/臨床心理士/生殖心理カウンセラー/がん・生殖医療専門心理士/ブリーフセラピストシニア

所属:株式会社ファミワン

「妊活や性の悩み、子育てや働き方のことまで、「誰に相談していいかわからない」テーマも歓迎しています。どんな内容でも大丈夫。安心してご相談ください。臨床心理学の確かな知識と技術を活かし、原因探しや悪者探しではなく、あなたにとってのゴールを発見するお手伝いをさせてください。」


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